ジル・クリストフ★そのまま...かな..ふふっ
礼服ではありませんが..こちらで、貴女にお会いできるなんて..これも神の仕業でしょうか。フフフッ..今日ここで、貴女にあえて..光栄ですよ、プリンセス...。
目的地も告げられないまま連れられ戸惑うアンの元に、ジルは静かに足音を響かせて近付いていった。
「......ジル?」
「ええ、アン」
普段は着る事の無い礼服に身を包み、ジルはふっと目を細めた。
(このような形でアンの前に立つと、勘違いしてしまいそうになります..私が、アンの王子だと)
唇に笑みを浮かべるとジルが手を差し伸べる。
「今日だけは、特別です」
(そう、今夜だけは.............)
目を瞬かせるアンの姿に、鼓動が震えた。
「.......私はあなたの、パートナーですよ..踊って頂けますか?」
普通であれば許されていないことを、ジルは申し込んでいる。
「.....はい」
戸惑いながらも触れた指先に、ジルは深く息をついた。
............
そうして音楽もない中、ジルはアンとのダンスを終えた。
(ダンスはただの礼儀だと思っていましたが...........)
「あなたと踊ると、こんなにも気持ちがいいのですね」
素直な言葉が口をつくと、アンが嬉しそうに頬を染める。
(もしかしたら.....同じ事を考えていたのかもしれませんね)
ジルの胸にも温かな何かが宿り、その感情に押されるように、握ったままのアンの手を引き寄せ、手袋を脱がせた。そうして、露わになった白い指先にキスを落とした.....。
アンの指にキスを落とすと、ジルが伏せていたまつ毛をあげる。
(今だけは、言葉にさせてほしい)
「.......誓いますよ」
吐息混じりにささやくと、指がぴくりと震えた。
(例え普段は、人前で触れることが叶わなかったとしても....)
「あなたに、永遠の愛を」
やがて薄っすらと涙の滲んだ目で見上げるアンを見下ろし、部屋から持ってきたリングピローを取り出す。
「いつか、誓いの指輪を入れて差し上げますよ」
(ですからあなたには、よそ見をせずに待っていて欲しいなどと....言えるわけは、ありませんが)
嬉しそうなアンに顔を寄せ、その柔らかな唇にキスを落とす。
「............」
やがてわずかに離れた唇の隙間で、ジルがくすっと笑みをこぼした。
(キス一つでこんなにも身体が疼くとは、もっと言えませんね)
................
城に戻ると、すっかり日が落ち淡い暗闇が部屋を満たしていた。
ベッドの上にアンを座らせると、ジルはキスをする。
(アンを前にすると、自分が自分ではない感覚になります..抑えが、効かない......)
それは普段きつく閉めているブレーキが、壊れて弾けたような感覚だった。
やがてアンがわずかな力で胸を押していることに気づく。
「っ...ま...待ってください」
「............」
(待てると、思うのでしょうか?)
ジルは離すどころか強い力で抱き寄せ、耳朶をかんだ。
「......後では、ダメなのですか?」
「......っ」
耳朶をかみ、甘く低い声音でささやく。するとアンの肩が、わずかにぴくりと揺れた。
(可愛らしい反応ですね)
ふっと笑うと、ジルは一度離れてその顔を覗きこむ。
「.......今が、いいんです」
アンの言葉に、ジルは自分の中で湧き上がる疼きを押さえ込んだ。
そうして身体を離すと、ベッドの上で向かい合った。
(プリンセスの言葉には、逆らえませんね)
気づかれないようにふっと笑みをこぼすと、アンが口を開く。
「今はまだプリンセスとしても、とても未熟ですが...素敵な女性になれるように、頑張ります」
「...........(ジルの笑み)」
(アンは、私の欲しい言葉を選んでくれているのでしょう)
その言葉に、ジルは少し心が揺れていることに気づく。
「教育係としては、嬉しいですね。でも......」
アンの頬に触れると、ゆっくりと肌が上気していくのがわかった。
愛おしさが、鼓動の高鳴りとともに溢れてくる。
(私自身として欲しい言葉は、違うと言ったら....困るでしょうか)
「これ以上女性らしくなっても、私が困るだけですよ」
それだけを告げると、ジルがうなじを引き寄せた。
「......っ....」
試すようにキスを繰り返すと、その度にアンの唇が熱を持つ。
(反応の全てが、男を誘っているようですね)
「..............」
ジルはため息をつくと、ささやく。
(この顔をもし、私以外の男が見たらと思うと........)
「気が気じゃありませんからね」
舌をいれると、必死に答えようとサラが唇を開いた。
そのいじらしい仕草に、ジルの鼓動が高鳴っていく。
「ん.....んぅ...っ」
ジルは深くキスを落としながら、アンの身体を強く抱き寄せた。
(いつからこんなにも、独占欲がわくようになったのでしょうか...プリンセスは本来、国の人....誰のものでもないと言うのに)
撫でるように肩に触れ、ドレスを落とす。
「..............」
(ですが.....)
露わになった肌に、どんなに頭で理解していても抗えない何かを感じた。
(プリンセスではなく、たとえ嘘でも私の花嫁になったアンは、私のものでいてほしいと、願ってしまう)
「あなたは.......」
アンの指先の力を肩に感じ、ジルはその身体をそっと押し倒す。
見上げるアンの額にかかった前髪を払い、口を開いた。
「私の手で、変えて差し上げます」
ジルはアンの目を覗き込むように、告げる。その瞳には、どこか必死に映る自分の姿があった。
「私の手で、変えて差し上げます..他の誰でもなく」
(ただ私の前だけで、女性でいてほしい)
ジルは確かめるように、その素肌に手を滑らせていく。
(この肌の熱も香りも.....私だけが知っていればいい)
火がついたように熱を持つサラの肌に、ジルが舌を這わせた。
「......アン」
驚くほど甘い声音でアンの名前を呼ぶと、アンがため息をつきながら声をあげる。
「っ....ぁ....ジル.....」
アンの手が頬に触れると、ジルはその手に指を重ねた。
(今夜が過ぎてしまえばもう、花嫁ではなくなってしまう.....今夜だけは、何度でも名前を呼びたい)
「アン.....アン」
その度に、アンのまつ毛がぴくりと震える。
(あなたが私のものだと、教えてください..そして..........)
ジルはゆっくりと唇を開き、深く長いキスを落とした。
「っ....アン」
(私が永遠にあなたのものであることも、今夜たっぷり時間をかけて、教えてさしあげますよ.....)
アンが私だけのものである今夜..私もまた、アンのものであると..たっぷりとその身体に教えて差し上げます..他の誰になんと言われようとも..私を思い出すように...
「....アン、アン...愛していますよ..私だけの..レディ.....」
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